労働契約法とは?
前回、労働基準法(労基法)の基本的な考えについて、お伝えしました。
今回は、労働契約法について、概要をお話ししたいと思います。誤解を恐れずに簡潔に説明していきますよ。
余談ですが、私mondは、仕事の都合で”社会保険労務士”や、”カウンセリングの国家資格”を保有しています。時々、その知見を皆さんと共有しながら、自分の復習も兼ねますね☺
さて、労働契約法は比較的新しい法律です。施行されて15年くらいですが、個人的には結構なインパクトがありましたので、そちらも後段にて。
〇 特徴
労働基準法(労基法)と混同されがちですが、労働契約法(労契法)は、使用者(会社)と労働者(従業員)との働く約束(契約)について、規定しています。
労基法が取り締まりを通じて、労働者に対する差別や被害を防ぐ目的に比べて、こちらは、約束のルールと効果について、規定しています。
すごくシンプルに言えば、法律でいう「約束」は、守らないと最終的に裁判で強制されたり、お金で賠償する方向になります。こちらも労基法と同様に、どちらかと言えば、会社側に守らせる方向の法律です。
〇 法律が出来た経緯
従業員が会社に対して裁判を起こすというのは、ずっと続いていたことなので、いろいろな種類の判例(最高裁の判決)があり、労働者と会社の揉め事の解決は、この判例が基準になっていました。
基準になっていたと言いましたが、判例を参照するなんて、普通の人はやりません。誰かに対し、「〇〇法に書いてある!」と言うことはあっても、「〇年〇月 事件番号〇事件名〇だ!」ってことは、あまり言わないと思います☺
さらに言えば、判例は変わる可能性がありますし、下級裁判所(地方の裁判所)は、従わない可能性も無いとは言えません。
この問題自体は、目新しいものでは無かったのですが、立法化の背景には、個別労働紛争と呼ばれる「従業員個人と会社との揉め事」が盛んになってきたという事があります。
ある分野の揉め事が盛んと言うことは、当然、ルールを知りたいニーズも高まりますよね。
法律は、市民が何かをする上での参考や拠り所にするものです。「法律違反になってないか見てみよう」とか、市販のマニュアル本等もその分野の業法を確認して作成しますから、その点でいうと立法化に意味があるわけです。
〇 個人的に思うこと
この労働契約法ですが、個人的には以下の2つに驚きました。
・「会社は、労働契約の中身を従業員に理解させるようにしなさい」
法律の第四条に規定されていますが、この当たり前の一文は、これまで満足に実施されていなかった印象があります。入社の際に労働条件の説明はあまりなく、何か通知書をもらい、「総務課かどっかに就業規則があったかなぁ」くらいの認識の人が多いのではないでしょうか。
この条文自体が、裁判の判決等で直接の根拠になるとは思いませんが、会社が説明を疎かにすると、「丁寧に説明していたら、労働者は誤解しなかった」という形で、労働者の主張を支えることになります。
・「契約社員も5年を超える契約では、無期雇用するように言える」
平成25年に新設されました。法律の第十八条に規定されている「無期転換」です。ルールはシンプル。
例えば、契約期間が、2年+2年+2年のように通算して、5年を超える契約の場合に労働者が申し出れば、期間の定めのない雇用になるというものです。
ポイントは、5年を超えた時点ではなく、契約期間の途中で5年を超える場合のその契約の時点以降なら、いつでも申し込めるところです。上で言うと3回目の2年の時点ですね。
何に驚くかと言うと、会社が拒否しても無期雇用になる点です。
前にも少し触れましたが、日本とか先進国は「自分で自由に決められる」ことが原則です。刑法に触れる(盗んだり、殴ったり)ならともかく、商売や日常のやりとりは、自分の気持ちがあって、初めてその約束に縛られるのですが、この条文は、会社にその気はなくても、条件が揃えば、勝手に無期契約の社員にクラスチェンジされる効果を持つのです。個人的には、方向性としては理解しつつも、随分と思い切ったなぁという印象です。
〇 終わりに
最後に、無期転換については、正社員になることとイコールでは無いので注意が必要です。もう少し具体的に言うと、契約社員等の時の待遇は、
“会社が特段、何かを決めていなければ、期間の定めの有無を除き一緒” ということです。
例えば、契約社員の賃金形態が時給制であり、正社員が月給制だとしても、無期転換されたからといって、月給制に変わるわけではないのです。
以上、労契法の簡単な説明でした☺
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